うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

先日PIEZOについて書きましたが

PIEZOと従来法を使っていてどのような違いがあるか

どう使いわけるか

個人的に思うところを書こうと思います

(あくまで個人の感想です)

 

セッティングの速度については従来法の方が早いです

従来法は針をインジェクターにさして角度を調節するだけで完了ですが

PIEZOはそれに加えオペレーションリキッドの充填やPIEZOの動作確認が必要です

 

精子の不動化の速度についてはPIEZOの方が早いですし、やりやすいです

従来法が精子の尾部をごしごしする手間があるのに比べ

PIEZOはフットペダル一つで不動化ができます

 

トータルの時間について私の場合は従来法の方が早いですが

透明帯がなかなか破れない方の場合はPIEZOの方が早い時もあります

 

成績について私の場合2PN率だけで見るとPIEZOの方がやや高く

3PNや1PN、0PN後分割も含むトータルの数字では私の場合従来法がやや高いです

この結果についてはいずれタイムラプスを利用して明確に出してみたいですね

(ただ後述のようにPIEZO実施症例の平均年齢の方が高いので、そういう意味では有用かもしれません)

 

従来法とPIEZOの使い分けについて

これもあくまで私の場合ですが

通常は従来法を使用し42歳以上の5個以下の方を目安にPIEZOを使用しています

年齢は学会発表や勉強会でPIEZOがより有用とされる年齢を参考にしています

なぜ個数が少ない人かというと

トータルでかかる時間は従来法の方が短くて済むので

卵子のエイジングの影響を少しでも受けずに済むのではないかという考えのもとです

たくさんの卵子に顕微授精を実施するときや複数件顕微授精が立て込んでいる場合は

トータルで早く終わる従来法を主力で進め

上記の条件やその他融解後の卵子などPIEZOにした方がよいと判断した場合はPIEZOを使用しています

 

大手クリニックさんでは全例PIEZOにされているところが増えてきたように思います

推察するに侵襲性と技術の標準化からでしょうか

それが理由であればその判断も選択肢の一つかと思いますが

侵襲性で言えば透明帯と卵細胞質が離れていない場合の透明帯穿破時の卵細胞質に対する影響や

圧力をかける前に卵細胞質が穿破されてしまう時の事

(インジェクションピペットの外径は従来法の方が細い)

圧力で卵細胞質が穿破できなかった時や圧が効かなくなった時の事を思うと

従来法といずれかがいいというのは個人的にはなかなか判断に迷う部分でもあります

従来法の吸引が良くないといわれていますが

本当に悪ければすべてのクリニックでもっと成績に差異が生じるのではないかと推察します

 

幾分管理と投資が必要となりますが

どちらも選択できる、臨機応変に対応できる環境こそが

受精ひいては妊娠・出産への近道となるのではないかと考えております