うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

 

不妊治療施設の培養室は通常

個人情報保護と安全確保の観点から

患者様からは見えないようになっております

胚の移動や受精操作など培養業務も同様に見えないようになっておりますが

もし私が患者さんであれば

中でちゃんとやってくれているのだろうか…と、ちょっと心配に思うかもしれません

患者様から「ちゃんとやっているのか」と聞かれたことはないのですが

今日はご参考までに顕微授精の失敗がありえるかどうかを書きたいと思います

 

 

まず

顕微授精に物理的に失敗というものが存在するかあり得るかどうか、と問われれば

強いて挙げれば

なにかしらあるとは思います

「物理的に失敗することが100%ない技術」というわけでは無いと思います

 

顕微授精の胚の移動中に胚をなくすというのは

顕微授精の技術以前の問題で

胚の移動技術の問題と思われるので顕微授精の失敗とはカウントしません

 

 

顕微授精の失敗を挙げるとすれば

マイクロマニュピレーターの操作ミスが挙げられると思います

 

顕微授精にはレバー操作が非常に多いです

この操作を卵に針を刺す際に誤ってしまうと

失敗が起こりえると思います

IMG_0184

例えば胚を刺している最中に

針を不必要に動かしてしまったり

卵に精子を入れるときに過剰に空気(厳密にはオイルなど)を出しすぎてしまうことが挙げられます

程度にもよりますが

操作ミスをすれば卵が死んでしまう可能性はあると思います

(試したことはありませんので理論上のお話です)

 

 

では

その失敗という事が起こるかどうかといいますと

通常は起こりえません

 

上記に書いたような失敗は経験者からすれば

「そんなことやったことない」と思われるほどあり得ない、やってはいけないミスなので

私の身の回りでもそのような事が起こったとは聞いたことがありませんし

そもそもそのような失敗をするような人は顕微授精のデビューはできません(当院でのお話です)

 

通常、クリニックとして多くのトレーニングをクリアしたうえで習得する技術であり

他の技術に比べ最後の方に習得する施設は多いと思います

 

 

 

補足とはなりますが

 

上記のようなミスがあった卵は、経験のある人間が見れば何かがあったことはわかります

当院ではタイムラプスインキュベーターによる培養ですので

なにかあれば医師や他の培養士が気づくことになります

 

 

 

受精の結果のご連絡の際に

顕微授精の実施後に卵が死んでしまっているとご報告をする場合がありますが

それは顕微授精の失敗ではなく

卵の膜が顕微授精の針を刺す行為に耐えられなかったと考えられます

 

 

一般体外受精は

顕微授精と違い技術としてはシャーレに精子を入れるのみですので

技術の差によるミスは起こりえません

精子を入れ忘れてしまうとそれはミスですが

各施設そのような事が起こらないシステムが構築されていると思います

 

 

 

顕微授精や受精方法について詳しく聞きたい場合は

クリニックまでお気軽にお問い合わせください