うめだファティリティ-クリニック
培養士の山本です
表題は「ゾナフリーらんし」と読みます
zonaとはzona pellucida(ゾナ ペルシダ)の略で透明帯のことです
zona free卵子とはこの透明帯がない卵子のことです
下図は当院HPの受精についての写真です
卵子細胞の周りにある厚めの膜になっている部分が透明帯です
この膜は卵子の保護をはじめ様々な役割を担っていますが
胚盤胞になったら最終的にはこの透明帯を破って
細胞部分だけが外へ出て着床することになります
稀にではありますが
この透明帯がない卵子があります
もともとなかったというよりも
なにかの拍子にヒビが入ってしまい
受精までの間にポロっとはがれてしまうというケースが多いのではないかと思います
このzona free卵子は
一般体外受精の場合は施術の際(シャーレに精子を入れる際)には観察することができません
卵丘細胞という卵子を保護する細胞により卵子を精密に観察することができないからです
もし何かの拍子ですでに透明帯のない卵子に一般体外受精をした場合は
透明帯による多精子受精を防止する機能が働かないため
まともに受精はできないと思います
具体的には
精子が何匹も入ってしまい死んでしまうものと思われます
zona free卵子であると確認ができるのは
多くの場合顕微授精の直前です
顕微授精を行う際は卵丘細胞を取り除く必要があります
取り除いた際にzona free卵子であると判定することとなります
繰り返しとなりますがzona free卵子が確認されることは非常に稀です
クリニックさんによって対応は異なるとは思いますが
当院の場合ですと生存していれば顕微授精の対象となります
受精するかどうかは数が非常に少ないので統計がとれるほどではないと思われますが
個人的には受精率は通常とほぼ変わらないのではないか、と思っています
過去には
そのままzona free の状態で胚盤胞まで育ったこともあります
zona freeであっても胚盤胞へ育てば凍結の対象となります
zona free卵子の初期胚凍結を過去にしたことがありますが
初期胚の場合は細胞間の接着が胚盤胞に比べて緩いので
バラバラになってしまう可能性があると思われます
私が凍結した際はバラバラにはなりませんでしたが
胚の移動の度に接着面積が小さくなっていくのがわかるのでヒヤヒヤしました
凍結の際にうまくいったとしても
その後、融解と移植
胚にとってはその先も子宮内で発育していかなければならないので
zona free卵子の初期胚凍結というものは
個人的にはあまり積極的には望みたくはないものではあります