うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

 

男性ができる不妊治療の検査は女性に比べると大変少ないです

最も重要かつほぼすべての不妊治療施設で行っているであろう「精液検査」が

かなり大きなウエイトを占めていると思います

他にはホルモン検査や精子のDNA断片化率を調べるSDF検査などがありますが

個人的にはこれらはあくまで精液検査を行った上で行う検査であるという印象です

(当院ではSDF検査は行っておりません)

 

 

ではこの精液検査が問題なければ

男性側には不妊原因は無いといえるでしょうか?

これも個人的意見ですが100%問題ない(男性が不妊の原因では無い)とは言い切れないと思います

 

まず前提として「問題とは何か」となりますが

多くの施設で採用されているWHOの基準がそもそも甘いので

WHOの基準を満たしているから問題ないとするのは早計であるように思います

WHOの基準ぎりぎりの精液だった場合

私であれば一般体外受精はあまりお勧めできません

なので「WHOの基準を満たしているから問題ない」とはいえません

 

 

次に、数字的に精液検査が大変優れている場合のお話です

例えば液量も4mlほどあり濃度も1億以上あり運動率も80パーセント超えるようであれば

多くの医師・培養士は精液検査には問題ないと思うと思います(上記はあくまで例です)

 

 

しかし精液検査はあくまでその時の検査の結果であり

卵にたどり着ける保証がされているわけではありません

例えばですが

一般体外受精の場合で検査から受精させるまでの間に運動率が極端に落ちてしまうような場合

前進運動はしているが前に進む力が弱い場合

(直進率が出ていてもその力強さやエネルギーを測っているわけではない)

卵にたどり着く前に精子の頭部から受精に必要な酵素を出す必要があるのですが、この酵素が出ていない場合

 

これらの場合は精液検査の結果が良くても受精しない場合はあります

 

他にも

受精はできても精子の染色体に異常が多かった場合は

胚盤胞に至る可能性は低くなります

胚盤胞になるには卵子の力だけでなく

例え見えなくなっていても精子の力が必要です

 

以上これらの要因により

精液検査だけでは不妊原因を断定することはできないと思います

 

 

そもそも一部の例外を除いてどちらに原因があるかなどわかりません

男性は精液検査に問題がないと言っても

だから男性が原因の不妊ではない、とは言い切れない点にご注意が必要です