うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

 

障がいのある子供が生まれるリスクについて

お電話でよくご質問いただくのでお答えしたいと思います

 

国が定める表記は「障害」ですが

昨今自治体や企業で「障がい」と表記するケースが増えてきているので

本稿では「障がい」と表記することといたします

 

障がいについては不明な点も多いので

あくまで解明されている部分のみ、培養士としての見解のみを述べます

今まで触れたことのないテーマですが

お電話でご質問をたびたび頂くので

皆さんも気になっているテーマであると思うので

今回取り上げることといたします

 

 

まず、障がいとは何かという点ですが

ご質問いただく際は漠然と

「○○だと障がいのある子供が生まれることがあるのですか」と聞かれることが多いので

具体的にどの障害を指しているのかはわかりませんが

おそらく先天的に身体障がい、もしくは知的障がいを持った児が生まれることを指していると解釈しています

やや具体的に言及します

 

身体障がいについてですが

身体障害者福祉法(昭和24年/1949年)第283号第四条によると

以下の五つの項目に障がいがあると身体障がいと定められ、障がい者手帳が交付されるそうです

①視覚障害
②聴覚又は平衡機能の障害
③音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
③肢体不自由
⑤内部障害

 

知的障害については身体障がいほど明確な基準が決められているわけではありませんが

厚生労働省が

「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ

日常生活に支障が生じているため

何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」

としています

 

お電話口での障がいとは恐らくこれらを指していると推定できます

 具体的な症状などについて解説することが本稿の趣旨ではないので 

障がいについての概要・解釈の推定は以上です

 

 

では上記の原因について触れていきます

原因は不明なものが多いものの

遺伝的な原因であるとされる事は低く

5%程度とされています

 

では残りの可能性は何かというと

原因不明なケースが多いという前提の元ですが

胚が着床した後に母親がおかれる環境の影響が大きいようです

例えば

喫煙をする、飲酒をする、感染症にかかる

妊娠中に薬を服用する(催奇形の副作用のある薬があります)、

妊婦が栄養失調の状態である、放射線照射を受ける、

精神的なストレスを受ける、ダイオキシン類に曝される

などです

もちろん上記を避けていても遺伝的以外の原因不明な要因により

障がいをもつ児が生まれる可能性はありますが

上記を避ける事で幾分可能性を下げる(上げない)ことは可能かと思います

 

ちなみにですが

遺伝的な要因で障がいのある児が生まれることは

親に障がいがなくてもあり得ますし

体外受精を行うからといって

自然と避けられるというものでもありません(着床前診断については後述)

 

 

ではここでようやく胚と障がいの可能性に関して書いていきます

よくご質問いただく

 

受精の方法

胚の見た目やグレード

精子の運動率や奇形率

精子や胚の凍結による影響

 

これらによる障がいとの相関は

私が知る限りではありません

 

 

染色体異常があれば

受精しない、胚盤胞にならない、流産してしまう

これらの結果となりますので

児が生まれるに至らない場合の方が圧倒的に多いです

 

 

ここで一点、胚の段階で判明(決定)している障がいがあります

21番目の染色体が多いとダウン症候群となります

着床前診断(PGT-A)を実施すると

胚の染色体数の異常を調べることができます(確度は100%ではありません)

出生前診断でも検査を行うことができます

ここはその是非を問う場ではありませんので

対象となる検査が存在するという点のみを記述しておきます

 

 

また、ダウン症候群の児が生まれる確率は

年齢が上がるにつれて上昇します

これについては様々なデータがありますが

ざっくりな数字ですと30歳だと約0.1%なのが

40歳だと約1%、つまり40歳で出産される方の児の

約100人に1人はダウン症候群という計算となります(30歳だと約1000人に1人)

 

 

 

まとめますと

胚培養の段階での選択で障がいを持つ児が生まれる可能性を上下することはほとんどないと考えられます

遺伝的な原因での障がいは5%程度で

多くが着床後の環境によるものが多いとされています

障がいについてご質問される方の多くは

障がいのない児を望むためにご質問されていることと思いますが

その対策としては早く妊娠に至るよう行動する

妊娠後は障がいのリスクが上がる行為を避ける

これらの方にリソースを割かれる方が有効かもしれません

 

 

今回はあくまで先天的なものの話で環境による後天的なものには触れておりません

かさねて、本稿は培養士が書いておりますので

詳しく知りたい方は専門の医師へご相談ください