うめだファティリティークリニック
培養士の山本です
受精率の良い悪いにかかわらず
「今回の卵は良かったのでしょうか」と聞かれる事はそこそこ多いです
受精直後の卵子にグレードを付けることが出来ないことは以前書きましたが
受精する際(まさに受精するとき)の卵子でも話は同じです
遺伝子レベルでの異常はわからないので上記のご質問も極論で言えば「わからない」なのですが
それではそこで話は終わってしまうので
今日は前回の話に加えてもう少し掘り下げて書こうと思います
卵子の「良い」「悪い」とは
患者さんによって感覚は違うかもしれませんが教科書通りに言うと
1、未成熟だった卵子
2、成熟していたけれど受精できなかった卵子
3、受精したけれど異常受精だった卵子
4、受精前や受精後に生命活動を停止した卵子(平たく言うと死んでしまった卵子)
これらの卵子は「良い」とは断定できないので、受精翌日に限って結果としては
正常受精した=良い卵子(受精に対して問題がなかった)と解釈が出来ると考えます
では受精できなかった卵子が悪い卵子だったのか?
いえ、そうとも言い切れません
受精した卵子=いい卵子だった(受精に対して問題がなかった)とは言えますが
受精しなかった卵子=悪い卵子だったとは言えないのです
察しの良い方はお分かりかもしれませんが
精子の運動能力や卵子に入ったあとの受精能力が悪かったという可能性もあるのです
良い卵子からすればはた迷惑な話ですが
受精しなかった段階で卵子・精子どちらが未授精の原因だったのかはわからず
せっかくの「良い卵子」も未受精という結果をもって
「良かったのかどうかわからない卵子」になってしまうのです
「今回の卵子は良かったのでしょうか」と言うご質問に対してのお返事は
正確にお答えしようとすると少々難しい話になってしまうかもしれませんが
「正常受精したものは良い卵子(受精に対して問題なかった)と言える」
とお考えいただけるとわかりやすいかもしれません