うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

 

これについては過去何度か書いていますが

時期的に気になっている人がもしかしたらいるかもしれないので

書き残しておこうと思います

 

培養士の仕事は募集要項なんかでは胚の管理・培養室の管理などとざっくり書かれている場合が多いです

具体的にあげるといくつかに大別できます

 

1,培養液やプラスチックシャーレの物品発注と在庫管理

わざわざこれを一番初めに書く必要もないのですが

まずは培養液がないと胚の培養が出来ません

 

2,培養液をプラスチックシャーレに入れて胚が培養できるようにする

胚を培養する培養液をシャーレに決まった分量入れる作業です

精子の調整液の用意や移植用のシャーレなども必要です

1日に数十枚、大きい施設では数百枚必要なところもあるかもしれません

作業的には単純作業の繰り返しですが

結構な枚数作る必要があるので

それなりに時間がかかります

 

 

3,精子処理

患者さんから提出された精液はそのままでは受精に使えません

精子以外の液体成分を除去する必要があるのと

動いていない精子を除く事が必要です

体外受精だけでなくIUI(人工授精)もこの作業が必要です

 

4,検卵

採卵によって取れた卵胞液から卵子を探します

慣れていないと卵が認識できなかったり見逃してしまったりします

当然ですが大事な卵子を見逃すことは許されません

ひとり立ちするには少し時間がかかる技術です

 

5,一般体外受精

培養液を入れたプラスチックシャーレに卵子と精子を一緒に入れます

この作業は比較的簡単なので卵操作が出来ればすぐにできます

 

6,顕微授精

培養士の花形ともいえる技術ですね

顕微鏡とマイクロマニュピレーターを使用して細い針を動かし

卵子一つ一つに精子を入れていきます

技術が未熟だと卵が死んでしまう確率が上がり受精率も下がるので

培養士の技術の中では最後の方に習得します

どれぐらいで習得できるかは個人の技術とクリニックの方針によります

 

7,胚の観察

培養している胚を観察します

これ自体は見てグレードをつけるだけなので

評価に対し責任が負えるところまで経験を積めば

比較的早く習得できます

 

8,胚の凍結

受精して胚が育てば凍結保存します

凍結液に浸けた胚を顕微鏡下で細いシートの上にのせて

液体窒素に入れて凍結します

この「胚を数十秒でシートに乗せる作業」は

個人的には顕微授精とはまた違った難しさがあると思います

 

9,胚の融解

凍結した胚は移植の日が来ると融かします

凍結の作業とは逆パターンで

シート状のデバイスから胚を融解液内で剥がし

手順通りに各種融解液に浸けていきます

 

10,胚の移植

細いチューブで顕微鏡下で胚を吸って

医師の元へもっていく作業です

移植自体は医療行為ですので医師が行います

 

11,そのほかの仕事

培養士は胚の操作だけでなく

それと同じくらい事務処理があります

電子カルテへの入力、妊娠率などの算出、学会へのデータ送信

胚の発育の記録の入力、役所への提出書類…

それに加え凍結タンクの管理(液体窒素の補充)

インキュベーターをはじめとする培養室内の掃除

胚の移送が入れば移送の手配

学会の参加や、新しい技術が入ればその習得も必要です

 

 

培養士の技術に関して、培養士は口をそろえて

「練習すればだれでもできる」と言います

私もこれには同感です

生まれつきの高い身体能力がないと出来ないだとか

その様な事はありません

時間と適切な教育環境があり練習さえすれば

誰でもできるようになれると思います

 

 

ただ一つ言えるとすれば人の命に関する仕事なので

高い倫理観は必要です

プレッシャーもあると思います

その点に関しては技術同様、仕事を通して時間をかけて

身に付けていくことになると思います