うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

今週は将来胚培養士になることも考えている学生さん4名が

培養室の見学へ来られました

 

私が対応したのはわずかな時間ではありましたが、その話の中で

「胚培養士の将来性についてどう思われますか?」とのご質問がありました

 

なかなか難しい質問ですね

AIと培養士についての私見は以前書きましたが

今日はその記事の最後に少し触れた

培養士の将来訪れるであろう変化(危機)に焦点を当ててみたいと思います

 

例えば、不妊に対する特効薬のようなものが開発されて

体外受精をする必要がなくなった場合

胚培養士は仕事として成り立ちません

「特効薬なんてできるわけない」と

思われる方もいらっしゃるかもしれませんが

体外受精が実際行われてからまだわずか40年

40年前には体外受精と言う技術自体がまだ世間に知られてすらいなかったのです

この先20年30年後には不妊治療がどのような形となっているのかは

まだまだわかりません

不妊治療≒体外受精の構造が崩れる事は大いにあり得る話です

iPS細胞が不妊領域にどのように臨床応用されていくかも

気になるところですね

 

 

次に、胚培養士の資格制度についてです

胚培養士は国家資格ではありません

学会認定資格(民間資格)です

胚培養士が国家資格ではない理由は

胚(受精卵)の段階では法の下では人としては扱われない事や

胚培養士の養成校がまだかなり少ない事などが推測として挙げられています

国家資格でない以上

国が培養士による業務を法的に制限した場合

例えば「胚操作は医師でないとしてはいけない」と国が定めた場合は

上記と同じく胚培養士は仕事がなくなります

しかし、それをしてしまうと今以上に医師の負担が増える事や

胚培養士の人口が増えてきていて世間に認知されてきているという段階で

混乱を避けるためにも国が強硬手段に出る可能性は低いかもしれません

どちらかと言うと

モラルハザードが起こり何らかの規制せざるを得ない状況になったり

それに類する風評被害が起こり社会的立場が瓦解するなど

他の職でもありえるリスク事案が起こるほうが可能性が高いかもしれません

 

 

AIの台頭については、先日書きましたように

採卵後から凍結融解胚移植までをフルオートメーション化する事は困難であり

細かな中間作業・機械自体の日ごろの操作やマネジメント・アクシデント発生時の対応

これらが必要となるので

胚培養士が完全に不要となる可能性は限りなくゼロに近いのではないかと考えています

 

 

 

どの業界もどの技術者も、長期的に見れば多かれ少なかれ変化や危機はあると思うので

世間の流れと有用な技術を見極める目

いざと言う時に動ける行動力

このあたりが必要になってくるのではないか思います