うめだファティリティークリニック

培養士の山本です

 

 

先日移送を検討中の患者様より

ドライシッパーはどれくらい傾けても大丈夫なのかとご質問をいただきました

同じ疑問をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんので

ブログ上でもお答えしたいと思います

 

 

当院のドライシッパーの概要については

こちらの記事をご覧ください

 

 

結論から申し上げると

取っ手を上に水平に移動させることが前提ではありますが

当院が採用している容器の場合は

少し斜めにした影響で胚・精子がダメージを負ったり死滅することはございません

 

斜めにした場合の心配事は主に「液体窒素が漏れ出る事」です

具体的に角度が何度まで大丈夫という保証や取り決めはございませんので

基本的には出来るだけまっすぐ移動させてください

 

徒歩で移動の際は取っ手を正しく持ち水平に

お車で移動の際も、できる限りまっすぐ固定して下さい

万が一倒れてしまった場合でも

すぐに水平に戻せば即座にケースから液体窒素が漏れ出る可能性は低いです

漏れ出たとしても理論上内部の温度は保たれています

(水平にしたのち、念のため1分ほど容器の側面には触れないでください)

 

 

少し専門的なドライシッパーの構造の話となりますが

ドライシッパーの内部は

液体窒素を吸うことができる特殊なスポンジのような構造になっています

スポンジ構造で吸いきれなかった余剰分が液体としてタンク内部に溜まっている場合に

横にするとその分がタンクの外に漏れ出る可能性があります

(余剰分が液体としてタンク内に溜まっている事自体は製品としては問題ありません)

 

 

では

液体窒素がもしもケースの外まで漏れ出た場合どうなるでしょうか

液体窒素は沸点がマイナス196度ですので

空気中に出ると物質としては沸騰している状態です

検証したわけではないですが

液体窒素がシュワシュワと沸騰しながら出てきて

見た目としてはちょっと怖い感じになるかもしれません

 

液体窒素が触れた部分は急速に冷却されますので

例えば車の中で漏れ出た場合は

液体窒素が触れた部分が損傷する可能性があります

皮膚に触れると凍傷の恐れがあります

 

 

公共交通機関での移動を禁止させていただいている理由の一つが

漏れ出て騒ぎになれば

電車が止まるなど大事に発展してしまう可能性があるからです

 

多くの公共交通機関が高圧ガスの持ち込みを禁止しているので

そもそも持ち込むこと自体が規約違反になる恐れがあります

 

 

当院のドライシッパーを使用したことによるトラブルの報告はありませんが

扱い方を誤ると思わぬ事故となる可能性もありますので

ご使用される方はお気を付けください