うめだファティリティ-クリニック
培養士の山本です
「受精」という言葉自体には微妙にいくつかの意味合いがあります
一般的な会話で「受精」というと
精子が卵子に到達・侵入することを言いますが
精子が卵子に到達すれば無条件にすべての卵子・精子が正常受精を示すのかというと
前核がちゃんと現れなければ正常に受精という現象が完了したとは言えず
体内では通常わからないはずが体外受精の場合は観察時にそれがわかってしまうため
培養士が言う「受精」とは前核が現れたことを指します
この段階で
精子の到達 と 前核の出現
受精という言葉の意味(どの段階を受精と指すか)が2つ出てきてしまっています
一般的に私たちの言う「受精した」とは
この前核が正常に見えたことを言います(広義には異常受精も含まれます)
一般体外受精という言葉にも受精という言葉が含まれますが
この言葉の中の受精とは「受精を試みる」「受精操作」という意味合いであり
培養士間で一般体外受精の手技を行ったことを「受精した」とは言わないと思います(私の知る限りでは)
なぜ今回このような記事を書こうかと思ったかと言いますと
私が一般体外受精を行った患者さんへ「受精の反応が見られなかった」とお伝えした直後に
「受精はしていたのでしょうか」というご質問があったからです
これだけ聞くと何とも不思議なやり取りかもしれませんが
この場合私の言った受精とは「前核の出現」を指しており
患者さんからの受精は「精子の侵入」を指していたと解釈しお答えしました
ちなみにですがこのご質問の答えは「わからない」です
精子が到達し侵入したがいずれかに問題があり受精の反応が出なかった(患者さんの言う受精をしていた)のか
それとも
精子は到達出来たが卵子に侵入できなかった
もしくは到達すらしなかったのか(受精しなかった)のかどうかは
体外受精であってもわかりません