うめだファティリティークリニック
培養士の山本です
先日患者様より頂いたご質問の中で興味深かったものがありましたので
今回はそちらをテーマに取り上げたいと思います
頂戴したご質問は以下の2点です
1,胚盤胞到達率が良くない場合はそれが自然妊娠に影響していた可能性はありますか?
2,胚盤胞到達率を私生活を変えることで向上させることはできますか?
1つずついきます
まずは1つ目
胚盤胞到達率が良くない場合はそれが自然妊娠に影響していた可能性があるかどうか、です
当院の胚盤胞到達率は45%ほどです
凍結するには基準を設けており細胞が少ない胚盤胞は妊娠の見込みがゼロもしくはゼロに近いので
当院では凍結を行っておりません
上記はあくまで平均ですので到達率が低い方(もしくは胚盤胞へ至らない方)も中にはいらっしゃいます
そういった方の場合は性交渉を持ったとしても
子宮内で胚盤胞へ今まで到達していなかったから妊娠に至らなかったのではないか?
という内容のご質問となります
お答えとしてはあり得ると思います(個人の見解です)
しかしまずはこれに関する反対意見から入りたいと思います
一般的に子宮内と培養器(インキュベーター)では環境が全く同じではなく
やはり子宮内の方が胚にとってはいい環境なのではないか、という意見が業界的には有力であり
性交渉と体外受精では胚盤胞到達率に差があるともいえます
そして
子宮内で胚盤胞になったかどうかは現在の科学技術では妊娠という結果を以てでしか確認が取れません
上記を加味すると子宮内と培養器では到達率に差はある、というのは私も思います
極論、子宮内で100%受精して100%胚盤胞になっている可能性も否定はできないのです
しかし
通常であればインキュベーターと大きく数値が乖離するよりかは
概ね似通ってくる可能性も高い、と思います
(体外培養が生理的に合わない可能性もありますがそれは例外的であると考えています)
つまり
体外培養で胚盤胞になりにくい場合は体内でも同じく到達率が低かった可能性はある、と
個人的には思います
2点目です
胚盤胞到達率を私生活を変えることで向上させることはできますか?
これについて考えます
まず前提として人間の体は千差万別であり
同じ体は2つとしてないといえます
例えば
代表的でいえるのは運動・食事・睡眠
これらをいつどれだけ実施(もしくは不足)したらどれだけの影響が体に出るかは人によるといえます
逆にタバコ・過度な飲酒・ストレスなどよくないものとされているものについても同様です
これらがどれだけの影響があるのか調査しようと思えば
全く同じコピー人間を用意して
検査対象の内容のみに変化をつけて生活してもらえれば
参考となる数値が出ると思います
例を挙げるとコピー人間Aには毎日たばこを1箱吸ってもらい
コピー人間Bにはタバコを吸わせないようにして
他の運動・食事・睡眠・与えるストレスに至るまで全く同じにして
数か月後~数年後に採卵・受精させて胚盤胞到達率を見るという実験です
もちろん現実的には不可能です
要は
なにががどれくらい体に影響が出るかは予測できない、ということを申したいわけです
もちろん多くの人を集めて喫煙群と非喫煙群に分けて莫大なデータを取った場合は
たばこが胚盤胞到達率に与える影響が出せるかもしれませんが
妊娠や出産に関してであればまだしも
胚盤胞に限定したデータは私が見たことがないというのと
年齢・本数・ニコチン含有量・ストレスの度合いなど多くのタバコ以外の要因も絡んでしまうので
タバコ一つとっても信憑性のあるデータを取るのは困難であると思います
(どこかデータ取ったことのある施設があったら詳細教えてほしいです)
日常生活において何を改善すればどれくらい良くなるかは未知数ですが
一般的に考えれば喫煙や過度な飲酒や睡眠不足など
不健康とされる内容のことをし続けてしまうと
卵子や精子への影響
ひいては胚盤胞到達率への影響というのも十分考えられます
以上今回は患者様より頂いたご質問への見解を述べました