うめだファティリティークリニック
培養士の山本です
受精結果をお伝えして
その結果が悪かった場合
どちらが原因ですかとよく聞かれます
ここでもよく書いていますが、それはわかりません
これはどちらかと明確にしてパートナー間の争いになるのを避けているわけでなく
本当にわかりません
形態学的には受精したかどうかしかわかりません
しかし突き詰めたら分かるケースがあるのでしょうか?
今日はそれについて考えてみたいと思います
例えば
動いていない精子(もしくは極端に運動率が悪い精子)を一般体外受精に用いれば
受精しないと思います
この場合受精しないという結果に対して
精子が動いていなかったことが原因であると言えます
しかしこんな結果が明白な手技はふつう行わないので
あまり参考にならないかもしれません
ですが逆にここまで非現実的なことをしなければ
明確にどこが原因か分かるケースはないとも言えます
上記で注意しないといけないのは
受精しないのが精子が原因という理論なので
この場合「卵子側に受精する能力があった」とは言えない事です
「どちらも原因」の可能性が捨てきれません
TESE精子を用いた顕微授精の場合はどうでしょうか
TESEの精子の受精率は一般的には通常の射出精子に比べると受精率は低い傾向です
しかし上記同様、精子も卵子も受精の能力が低いという場合も考えると
結局どっちが原因かという話において「どっちも」の可能性はやはり捨てきれません
別の視点から考えてみましょう
例えば、長らくパートナーとの子供ができずに体外受精でも妊娠に至らず
別れた後に別の新しいパートナーと
同じ条件で体外受精を行ってすぐに妊娠した場合は
原因が前のパートナーであったと推察されることでしょう
しかしこれも例えば10回やってダメで次は1回でできた場合は
前のパートナーが原因である可能性は高いといえますが
1回 対 1回などどちらも少数の場合は「たまたま・偶然」とも言えてしまいます
結局のところどちらが原因かというのは断定できるケースはほぼないのです
それがたとえ分かったとしても
自分か相手を責める流れになるのであればわからないほうがいいのかもしれません
どちらが原因を追究して原因がある方は改善に努めたいという方もいらっしゃるかもしれませんが
個人的には妊娠に向けた行動は原因云々関係なく
双方常々しておいた方がいいと思います
自分に原因はなさそうだから、と不摂生していると
皮肉なことにその行為が新たな原因となってしまう場合もあります