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不妊症・不育症について

不妊症の定義

2年間夫婦生活を営んでいても、妊娠しない夫婦を不妊症と言います。

100組夫婦がいると、最初の1年目で75組の夫婦が妊娠し、次の1年で10組の夫婦が妊娠します。つまり残る15組(15%)の夫婦が不妊症ということになります。しかし、女性の結婚年齢が高くなったことなどにより、不妊症は増加してきています。 最近では1年間妊娠を希望しても、妊娠しない夫婦を、不妊症と定義するようになってきました。

不妊症の原因は約40%が男性側にあり、約52%が女性側に原因があるという調査結果があります。また、男女共に原因がある場合もあります。このことから、不妊症の検査は夫婦ともに受けて頂くことが原則と言えます。また、不妊原因は1つとは限らず重複していることも少なくありません。「不妊症」とは、あくまでも現在のところ子供が出来ていない状態を言っているだけで、永久的な病名ではありません。ですから、不妊の原因を探ってそこを改善すれば、きっと赤ちゃんも出来るはずです。
結婚して1~2年、赤ちゃんが欲しいのにまだ出来ないというカップルは、悩んでいないでちょっと行動を起こしてみましょう。検査を受けて原因をチェックしてみれば、赤ちゃんへの夢もワンステップ近づいたことになるでしょう。

不妊症の原因と治療について

不妊の原因や治療歴によって、各自の治療スケジュールは異なります。一応治療の目安として下さい。
はじめは、不妊の原因を探るまでの検査を奥様とご主人様並行して進めて行きます。原因が分かれば、それに対応した治療が行われます。原因が特定出来ない場合には、排卵を推測して一番妊娠しやすいタイミングを計る事を中心に行います。
その後、積極的に排卵誘発剤を使用したり、人工授精法を行います。
以上の治療を行っても妊娠されない場合には、ご希望により体外受精法を試みます。しかし、治療歴や不妊原因によっては、すぐに体外受精法を行う場合もあります。

不妊症の原因と治療法は、大きく分けると次のように大別されます。

01性機能障害によるもの

女性の性機能障害には、精神的なものと解剖学的に問題のある場合があります。
男性の性機能障害には、勃起障害と射精障害があります。

02頸管因子によるもの図2参照

精子の通り道である子宮の頸管部分が筋腫やポリープによって狭くなり、通過しにくい状態であったり、頸管から分泌される粘液の量が少なかったり性状が悪かったりすると子宮の奥に精子が進めなくなり不妊症になります。

03子宮因子によるもの図2参照

子宮の形が異常な場合(子宮奇形)や子宮筋腫(特に粘膜下筋腫や多発性筋腫)が存在する場合、あるいは子宮内膜ポリープや子宮内腔の癒着がある場合に不妊症になる場合があります。但し、子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあると必ず不妊症になるというわけではなく、その存在する場所や大きさによっては、妊娠が可能な場合があります。
さらに、子宮内膜の機能異常(黄体ホルモンによる子宮内膜の反応性が悪い場合など)によっても不妊症となります。

04卵管因子によるもの図2参照

卵管は、精子の移送や受精卵の発育・移送を担っている重要な管です。この卵管が、膣から侵入したクラミジアなどに感染すると卵管が詰まったり、細くなったり、癒着したりして精子と卵子が会えなくなり不妊症になります。また、子宮内膜症によって、卵管が癒着を起こし不妊症になる場合や、卵管内に水が貯まる卵管留水腫がある場合にも不妊症になります。その他、卵巣から排卵した卵子を卵管内に取り込む卵管采の機能異常(ピックアップ障害)によっても不妊症になります。

治療法としては、一応治療の目安として。

  • 「通水・通気検査」での治療
  • 「腹腔鏡検査」での精査
  • 「卵管形成術」
  • 「体外受精法・胚移植法」

05男性因子によるもの図1参照

男性因子とは、精液量が少ない場合や精子数が少ない(乏精子症)場合、あるいは精子の運動率が悪い(精子無力症)場合や奇形精子の割合が多い(奇形精子症)場合などがあります。また、精子の数が多くても機能(精子の細胞膜や先体酵素)が異常な場合にも不妊症になります。あるいは、精巣内で精子が造られているにも関わらず、精管(精子の通り道)が詰まっていで射精精液中に全く精子を認めない(無精子症)場合があります。下図を参照して下さい。
精子が存在する場合には、まず薬物療法を行います。それでも妊娠に至らない場合、人工授精法を併用します。尚、精液所見により自然妊娠が困難と判断される重度の乏精子症や精子無力症などの場合は、はじめから顕微授精法をお勧めする場合があります。
無精子症の場合は、精巣(睾丸)で精子が造られているなら、泌尿器科の手術で精巣の組織の一部を採取し、精子を見つけて顕微授精法を試みます。

図1

図1

(日本オルガノン社より提供)

06内分泌因子によるもの

  • 40歳前に閉経がきてしまう早期卵巣不全の場合、不妊症になります。
  • 下垂体から分泌されるホルモンで、プロラクチンと呼ばれるホルモンが高値となる高プロラクチン血症になると男女ともに不妊症の原因となります。
  • 甲状腺疾患により、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少すると無排卵になり、不妊症の原因となります。
  • 脳にある視床下部と下垂体と呼ばれる器官からのホルモンによって排卵がコントロール(規則正しい月経と排卵のしくみの項参照)されていますが、このどちらの器官が障害されても無排卵となり不妊症となります。
  • 卵巣に小さな卵胞がネックレス状に多数認められる多膿胞性卵巣症候群では、卵胞が発育せず排卵出来なくなり、月経異常を起こして不妊症となります。
  • 体重が不妊症の原因になる場合もあります。肥満による排卵障害として前述の多膿胞性卵巣症候群があります。体重減少性の排卵障害としては、過度なダイエットやストレスなどがあります。ダイエットすることが、体にとってストレスとなりホルモンのバランスが崩れて排卵障害に陥るのです。
  • 成熟した卵胞が破裂しないでそのまま黄体化してしまう黄体化未破裂卵胞症候群では、基礎体温表も2相性になりきちんと排卵したように見えますが、実際には排卵が起こっていない状態で、毎周期にこの症状がある場合には、不妊症になります。

07受精障害によるもの

受精障害は、精子側に問題がある場合と卵子側に問題がある場合とが存在します。体外受精法や顕微授精法を実施することにより、これらの障害が診断できるようになりました。

08免疫異常によるもの

頸管粘液の中に、精子を動かなくしたり精子を凝集させてしまうような抗精子抗体と呼ばれる抗体が存在する場合には、射精された精子が子宮内を進めなくなり、結果として卵子と受精できなく不妊症となります。

09子宮内膜症によるもの

子宮内膜は、子宮の内腔にある膜で卵巣から分泌されるホルモンの影響により肥厚し、妊娠しないとはがれ落ち月経が起こります。子宮内膜症とは、この内膜が本来の子宮内腔ではなく、骨盤の腹膜や卵巣などの中に入り込んでいる症状のことをいいます。子宮内膜症があると月経痛がひどくなったり、性交時痛が起こります。
子宮内膜症が子宮筋層内にできた場合を子宮腺筋症といい、卵巣にできた場合をチョコレート膿腫といいます。チョコレート膿腫の症状がひどくなると、正常な卵巣組織が少なくなって排卵が起こらなくなったり、黄体化未破裂卵胞症候群が起きたりします。

10排卵障害によるもの

排卵がおこらないともちろん妊娠はしません。この場合必ず月経の異常を伴います。例えば何ヶ月も月経がない(無月経)とか、あるいは生理が遅れがちのような場合は稀発月経といい、排卵するために長い日々がかかる事が推定されます。あるいは排卵を伴っていない出血(無排卵性出血)のこともあります。あるいはしょっちゅう出血があり、また長期間持続するような例も無排卵の可能性があります。これらを全てまとめて排卵障害といいます。
基礎体温表や卵巣の超音波検査により、排卵がうまく行われていないことが判明すると、排卵誘発剤を用いて成熟卵子の排卵を促します。
排卵誘発剤には、主に経口剤と注射薬があり、その組み合わせにより沢山の排卵誘発法がありますが、専門の熟練した医師が経過を観察しながら投薬しますので、卵巣過剰刺激症候群などの副作用の心配は殆んどありません。

図2

図2

(日本オルガノン社より提供)

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